イタグレにペット保険は必要?骨折30万円の現実と“後悔しない”判断材料

こんにちは、ラーテル犬舎の西山です。

「ペット保険ってどうしたらいいですか?」

子犬をお引き渡しするたびに、かなりの頻度で聞かれます。

判断材料が少ないままだと、「とりあえず加入」や「なんとなく様子見」をしている方が多いとも感じています。

この記事では、イタグレを迎えるうえで知っておきたい「かかりやすい病気・ケガとその費用」「保険の落とし穴」「積立との比較」を、できるだけ正直に整理してみます。

加入するかどうかの最終判断は、ぜひこの記事を読んだ後でご自身でしてみてください。


目次

イタグレが「かかりやすい」3つのトラブル

まず、この犬種と医療費の話を切り離せない理由から始めます。

イタグレはほんとうに健康でたくましい犬でもあるのですが、いくつかのことについては、他の犬種よりも明確にリスクが高い傾向があります。

1. 骨折——若いうちに直撃しやすい、高額な怪我

イタグレで最もよく知られているのが、橈骨・尺骨の遠位端骨折(前脚の手首に近い部分の骨折)です。

体重に対して脚が細長く、前脚の先端に向かうほど骨への血流が乏しいという構造的な理由があります。

ソファやベッドから飛び降りるだけで骨折するケースがあるのは、このためです。

特に成長板が閉じる1歳頃まで、脆さのピークが続きます。好発年齢は3ヶ月〜2歳未満です。

費用が大きいのは、治療方法にあります。

小型犬の橈尺骨骨折をギプスのみで治療しようとすると、骨がうまくくっつかない「骨不癒合」になる確率が非常に高いとされています。

実際の国内の費用事例を並べてみます。

骨折手術の実費(国内事例)

内容費用
手術(プレート除去なし)23〜30万円
プレート除去まで含む総額の目安35〜40万円
ペット保険会社が公表する請求データの例約308,700円

骨折は「若い元気な時期」に起きやすいという点が、後でくわしく説明する保険vs積立の話に直接つながってきます。

2. 歯周病・口の中のトラブル

イタグレは顎が小さく、歯が密集しています。

口の中の衛生状態が悪化しやすいため、若い年齢で歯肉炎や歯周病が進むケースがあります。

口の中のトラブルを放置すると、歯を抜かなければならなくなることも。

歯石除去や抜歯は、口の中をしっかり処置するために全身麻酔が必要です。

費用は内容によって幅がありますが、ペット保険会社が公表している請求データでは、約97,300円という例が報告されています。

予防として毎日の歯磨きが効果的なのですが、麻酔をかけての歯石除去は「予防目的」として保険の対象外になるケースがある——この点は後でくわしく触れます。

3. 膝蓋骨脱臼(パテラ)——「先天性」だから注意が必要

MPL(Medial Patellar Luxation:内側膝蓋骨脱臼=ひざのお皿が内側にずれる状態)も、イタグレでよく見られます。

先天的・遺伝的な要素が強く、グレード1〜2は経過観察で済むことも多いですが、グレード3〜4になると手術が必要になります。

片側の手術費用はケースや医療機関によって異なりますが、
ペット保険会社が公表している請求データでは、約254,000円という例があります。

ここで大事なポイントを一つ。

パテラは「先天性疾患」として、保険の対象外になるケースがあります。

保険会社によって判断が異なりますが、加入前や加入時に診断されている場合、または先天性の疾患として免責となる場合があります。

「保険があるから大丈夫」と思っていたのに、いざという時にパテラが対象外だった
——というのは、初めての飼い主さんが最もつまずきやすいポイントの一つです。


別でおさえておきたいこと——「麻酔のリスク」がイタグレは一般の犬と違う

これは保険の話とは少し異なりますが、医療費に影響するのでお伝えします。

イタグレを含むサイトハウンド(視覚を使って速く走る犬種のグループ)は、麻酔への感受性が普通の犬と異なります。

体脂肪率が非常に低いため、チオペンタールなど脂肪に移行して作用を緩和するタイプの麻酔薬が、
血液中に高濃度のまま残りやすいのです。

このことは1986年に発表された犬種間のバルビツール酸感受性に関する研究でも報告されています。

つまり、骨折・パテラ・歯の処置、どれも麻酔が必要な手術になりますが、
イタグレはその麻酔管理に精通した動物病院を選ぶことが重要です。

麻酔プロトコル(手術の手順と使う薬の計画)を確認できる、対応実績のある病院かどうか——これが安全と費用の両方に影響します。

かかりつけの先生に「サイトハウンドの麻酔対応はどうされていますか?」と一度確認してみることをおすすめします。


ペット保険の仕組みと「落とし穴」

ここからが保険の話の本題です。

ペット保険の基本的な仕組みを確認してから、初心者が誤解しやすいポイントを整理します。

保険料のイメージ

補償割合や保険会社によって差がありますが、小型犬の月額保険料のイメージを、一般的な目安として示します。

年齢補償50%補償70%補償100%
0〜3歳1,430円2,120円2,640円
4〜8歳1,730円2,390円3,020円
9〜12歳2,610円3,180円4,280円
13歳〜2,950円3,590円4,850円

保険会社・プラン・体重によって変わります。あくまで参考値として見てください。

落とし穴1:待機期間

病気(内科系のトラブル)は、加入後30日間は補償されないのが一般的です。

待機期間中に発症した病気は、完治後の再発も含めて生涯ずっと対象外になるケースがあります。

ケガ(骨折など)は待機期間なしで即日補償されることが多いですが、病気に関しては「加入したらすぐ使える」わけではない点に注意が必要です。

落とし穴2:先天性疾患・既往症の免責

加入前に診断されていた病気や、先天性疾患は補償対象外になります。

先ほど触れたパテラはここに該当しやすいです。

また、定期健診や健康診断の記録に「〇〇の疑い」と書かれているだけで、対象外になる場合もあります。

加入を検討する際は、「何が免責になるか」を必ず確認してから申し込みましょう。

落とし穴3:「予防目的」は対象外

ワクチン・フィラリア予防・ノミダニ対策など、予防目的の処置は保険の対象外です。

歯石除去も、予防目的のクリーニングは対象外で、
治療目的(歯周病の治療と診断された場合)のみが対象になります。

この違いは診療明細の書き方にも影響するため、受診前に確認しておくと混乱が少なくなります。

落とし穴4:年齢とともに上がる保険料・対象外の追加

保険料は年齢に応じて段階的に上がります(例:3・6・9・12歳の節目)。

また、更新時に新たな対象外項目が追加される場合もあります。

新規加入の年齢上限は保険会社によって異なります(おおむね7〜8歳前後を上限とするものもあれば、13〜14歳まで新規加入できるものもあります)。

落とし穴5:年間の補償回数・日数に上限がある

通院や手術の回数・日数に年間の上限がある保険商品が多いです。

例えば、通院は年20日まで・手術は年2回まで、といった上限が設けられている商品があります。

慢性疾患で長期通院が続く場合、年の途中で上限に達することがあります。


保険に入る vs 自分で積み立てる——数字で比べてみると

保険は「得か損か」という視点で見ると、迷いが増えます。

保険の本質は「低確率だけれど、起きたら大きな出費に備える商品」です。

ここでは、数字を使って整理してみます。

15歳まで保険料を払い続けると

70%補償のプランを15歳まで継続した場合の概算です(月額は一般的な目安として置いた値です)。

期間月額概算合計
0〜3歳(48ヶ月)2,120円約10.2万円
4〜8歳(60ヶ月)2,390円約14.3万円
9〜12歳(48ヶ月)3,180円約15.3万円
13〜15歳(36ヶ月)3,590円約12.9万円
合計約52.7万円

犬の生涯医療費と比べると

ペット保険会社などが公表している統計データによると、犬の生涯医療費の平均は約165万円とされています。

70%補償の保険に加入している場合、自己負担の期待値は165万円×30%=約49.5万円です。

保険料52.7万円と自己負担49.5万円を比べると、期待値ではほぼ差がありません

つまり、保険は「平均的に見れば元をとれる商品」ではなく、「ある特定のリスクに備えるための商品」です。

では、なぜ保険に入る意味があるのか

ラーテルが「一概にどちらがいいとは言えない」と言う理由が、ここにあります。

若い時期にリスクが集中する、という問題です。

骨折は2歳未満に好発します。

自己積立で備えようとすると、貯まるまでに時間がかかります。

例えば生後6ヶ月で骨折して30万円の手術費が必要になっても、
積立額がまだ数万円であれば、その差額は全額を即日用意しなければなりません。

「若い元気な時期に、一番お金のかかる怪我が来やすい」
——これが積立のもつ最大の弱点です。

一方で、既往症がある場合や、老犬になってからの大きな問題がない場合などは、積立のほうが柔軟に使えることもあります。


結局、どう判断すればいいのか

ラーテルが考える「目安」として、整理してみます。

保険が向いているかもしれないケース

  • 若い犬(特に1〜2歳)を迎えたばかり
  • 「何かあっても後悔しないようにしたい」という気持ちが強い
  • 手術が必要になっても迷わず対応したい

積立が向いているかもしれないケース

  • 医療費のための積立を毎月続けられる
  • 既往症や先天性疾患の懸念があり、保険の審査や免責が心配
  • シニアになってから大きな問題なく経過している

どちらが正解、というものではありません。

ラーテルとしては、「迎えたばかりの若い子には、最初は保険を検討してほしい」と思うことがあります。

骨折のリスクが最も高い時期と、積立が最も少ない時期が重なるからです。

ただ、どの保険商品を選ぶか、どのプランにするかは、家庭の状況と照らし合わせて考えてみてください。


最後に

イタグレは、ほかの犬種に比べて医療費がかさみやすい出来事——特に若いうちの骨折——が、ある程度の確率で起きる犬種です。

だから保険の話をきちんと考えてほしいと、ラーテルは思っています。

一方で、保険は万能ではありません。

「加入したから安心」ではなく、「何が補償されて、何がされないか」をちゃんと理解した上で使うものです。

この記事が、「漠然と迷っていた」状態から、「自分の状況でどう考えるか」へ一歩進むきっかけになれば嬉しいです。

何か迷うことがあれば、ラーテルにも気軽に聞いてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。保険の加入・選択にあたっては、各社の最新の約款・重要事項説明をご確認ください。


参考文献

  • Aikawa T, Miyazaki Y, Shimatsu T, Iizuka K, Nishimura M. “Clinical Outcomes and Complications after Open Reduction and Internal Fixation Utilizing Conventional Plates in 65 Distal Radial and Ulnar Fractures of Miniature- and Toy-Breed Dogs.” Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology, 2018;31(3):214-217. PMID: 29684919
  • Robinson EP, Sams RA, Muir WW. “Barbiturate anesthesia in greyhound and mixed-breed dogs: comparative cardiopulmonary effects, anesthetic effects, and recovery rates.” American Journal of Veterinary Research, 1986;47(10):2105-2112. PMID: 3777630

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