「うちの子、自分のうんちを食べちゃうんです……。
これって、しつけが悪いんでしょうか。それとも、どこか病気なんでしょうか」
初めて犬を迎えた飼い主さんから、よく相談されるのが、この「食糞(しょくふん)」の悩みです。
かわいい子が、よりによってそれを口に入れている。
ショックですよね。
でも、まず安心してください。結論から言います。
あなたのしつけのせいでも、栄養不足のせいでもない可能性が高いです。
そして、食糞は決して珍しい行動ではありません。
この記事では、「なぜ食べるのか」「どうやめさせるのか」「やってはいけないこと」を、
できるだけわかりやすく説明します。
まず知ってほしい:食糞は「6頭に1頭」の、よくある行動
アメリカの大学が、1,552頭の犬を調べた大きな研究があります。
その結果、約16%(およそ6頭に1頭)の犬が、うんちを食べる行動をよくしていました。
つまり、食糞は「あなたの家だけで起きている、恥ずかしいこと」ではありません。
犬という動物では、そこそこ普通に見られることなのです。
まずは、肩の力を抜いてください。
犬がうんちを食べるのはなぜ?
「なぜ食べるの?」——理由は、実はまだ完全にはわかっていません。
ただ、この研究でわかったことがあります。
よく言われる原因は、当てはまらなかった
ネットでは「栄養不足」「しつけの失敗」「愛情不足」「ストレス」などが、よく原因として挙げられます。
でも、この研究で調べたところ、栄養不足・しつけ・不安といった要因と食糞の間には、はっきりした関係が見つかりませんでした。
- フードの内容は、食べる子と食べない子でほとんど差がなかった(=栄養不足のせいではない)
- 食糞する子の78%は、トイレをちゃんと覚えていた(=しつけの失敗ではない)
- 不安やストレスとの関係も、見つからなかった
つまり、自分を責める理由は、ここにはありません。
いちばん関係していたのは「食いしん坊かどうか」
では、何が関係していたのか。
いちばん関係が強かったのは、「がつがつ食べる、食いしん坊な子かどうか」でした。
「足りないから食べる」のではなく、「食べることが大好きで、口に入れる対象が広い子」
——そんなイメージです。
もしかしたら「本能の名残」かもしれない
もうひとつ、おもしろいことがわかっています。
食糞する犬の多くは、新しいうんち(2日以内のもの)を選んで食べていました。
古いものには、あまり手を出しません。
犬の祖先(オオカミ)は、巣を清潔に保ち、寄生虫が広がるのを防ぐために、新しいうちにうんちを片づけていた
——そんな「本能の名残」ではないか、と考える研究者もいます。
ただし、これはまだ「そうかもしれない」という段階の話です。
断定はできません。それでも、「うちの子は変になったの?」と悩む必要はない、ということは伝わると思います。
犬の食糞のやめさせ方|いちばん確実なのは「すぐ片づける」
ここからが本題です。結論を先に言うと、
いちばん確実な方法は、地味ですがこれです。
うんちを、出たらすぐに片づける。
拍子抜けするかもしれません。
でも、これがいちばん効きます。理由はシンプルで、うんちがそこになければ、食べようがないからです。
ラーテルでも、子犬たちを叱ったりはしていません。
やっているのは、この「出たらすぐ片づける」だけです。
今日からできる4つのこと
- 出たらすぐ回収する——「あとでまとめて」をやめる。排泄を見届けて、その場で片づける
- 排泄のタイミングにそばにいる——食後・起き抜け・遊んだ後は出やすい。居合わせれば回収が間に合う
- 庭やドッグランでは目を離さない——放っておくと間に合いません
- 片づけるときは、無言で淡々と——大騒ぎしない(理由は次で説明します)
サインを教えるのも役立つ
うんちに近づいたとき、「サイン」で気をそらして、おやつと交換する練習も効果的です。
- うんちより魅力的なおやつを見せる
- 犬がそちらに来たら、おやつをあげる
- 「うんちから離れる=いいことがある」を繰り返し教える
この「交換」を覚えると、無理に取り上げなくてよくなります。
なお、無理に口をこじ開けたり、力ずくで奪ったりはしないでください。
かえって「取られる前に食べてしまおう」と、隠れて食べるようになることがあります。
やってはいけないこと|叱る・鼻を押しつける
いちばん大切なことです。
食糞を叱らないでください。
鼻をうんちに押しつけるのは、絶対にやめてください。
理由は2つあります。
1つめ。 叱ると、犬は「うんちがあると、飼い主が怒る」と学ぶことがあります。
すると、見つかる前に、あわてて食べて隠そうとする子もいます。これでは逆効果です。
2つめ。
大声を出したり追いかけたりすると、犬にとっては「かまってもらえた(ごほうび)」になることがあります。
だから、無言で淡々と片づけるのがいちばんなのです。
(叱るしつけがなぜ逆効果になるのかは、「叱るしつけ」が犬を壊す——罰の科学でも詳しく書いています)
食糞防止サプリやフードは効くの?
「食糞防止サプリ」や「食糞対策フード」も、たくさん売られていますよね。
僕も使用したことがあり、実感では効果ある子もいれば全くない子もいるな。くらいでしたが、
正直にお伝えします。先ほどの研究では、
市販の食糞防止サプリ11製品の成功率は、0〜2%でした。
「便をまずくして食べさせない」という発想の製品が多いのですが、
犬はわざわざ新しいうんちを選んで食べているくらいなので、味を変えてもなかなか効かないとのことです。
フードを変えても、研究では食糞との関係は見つかりませんでした。
ですので、サプリやフードに期待しすぎず、まずは「すぐ片づける」から始めるのがおすすめです。
こんな食糞は、動物病院へ
多くの食糞は、あわてなくて大丈夫です。
ただし、次のような場合は、一度動物病院で相談してください。
- 今まで食べなかった子が、急に食べ始めた
- 食欲はあるのに、体重が減ってきた
- うんちがゆるい・量が多い・脂っぽい
- 水をたくさん飲む、おしっこが増えた
- 高齢の子で、他の行動も変わってきた
急に始まった食糞は、消化や内臓の病気が隠れていることがあります。
しつけの問題として扱う前に、まず体を診てもらうと安心です。
【関連記事】もっと詳しく知りたい方へ
食糞は、状況によって対応が少し変わります。あなたのケースに近いものを、あわせて読んでみてください。
- 子犬が食べる場合 → 子犬がうんちを食べる…いつまで続く?やめさせ方
- 他の犬や猫のうんちを食べる場合 → 犬が他の犬・猫のうんちを食べるのは危険?リスクと対策
こちらは、自分のうんちを食べる場合よりも注意が必要なことがあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 犬が食糞するのは、しつけが悪いからですか?
いいえ。1,552頭の研究では、食糞する犬の78%がトイレをきちんと覚えていました。
しつけの失敗とは関係が見つかっていません。自分を責めないでください。
Q. フードやサプリを変えれば治りますか?
研究では、フードと食糞の関係は見つかりませんでした。
市販の食糞防止サプリ11製品の成功率も0〜2%でした。まずは「出たらすぐ片づける」が確実です。
Q. 叱ってやめさせてもいいですか?
やめてください。叱ると「見つかる前に食べて隠そう」と学んでしまい、逆効果になります。
無言で淡々と片づけるのが正解です。
Q. 食糞は病気のサインですか?
多くは違います。ただし、今までしなかった子が急に始めた、痩せてきた、うんちがゆるい、などの場合は、病気が隠れていることがあるので受診してください。
まとめ
- 食糞は、6頭に1頭に見られる、珍しくない行動
- 栄養不足・しつけの失敗・愛情不足のせいではない——あなたのせいではありません
- いちばん確実なのは、「出たらすぐ片づける」
- 叱らない(隠れて食べるようになり、逆効果)
- サプリ・フードは期待しすぎない(成功率0〜2%)
- 急に始まった食糞は、動物病院へ
食糞は、あなたを困らせようとしてやっているわけではありません。
魔法のような解決法はありませんが、「出たら片づける」を続けるだけで、食べる機会はぐっと減らせます。
あまり気に病まず、淡々といきましょう。
参考文献
- Hart BL, Hart LA, Thigpen AP, Tran A, Bain MJ. (2018) The paradox of canine conspecific coprophagy. *Veterinary Medicine and Science* 4(2): 106-114. DOI: 10.1002/vms3.92(PMID: 29851313)