「うちの子、散歩中によその犬のうんちを食べようとするんです」
「猫を飼っているんですが、犬が猫トイレをあさってしまって……」
これも、よくある相談です。
自分のうんちを食べる分には、実はそこまで神経質にならなくて大丈夫なことが多いのですが
——他の動物のうんちを食べる場合は、話が変わります。
ここには、実際に健康のリスクがあるからです。
この記事では、何が危険で、どう防ぐかを、わかりやすく説明します。
なぜ「他の動物のうんち」は注意が必要なの?
自分や同居犬の新しいうんちに比べて、
よその動物のうんちには、病気の原因(ウイルス・寄生虫・薬など)が含まれている可能性が高いからです。
とくに、相手がどんな健康状態か、どんな薬を飲んでいるか、こちらにはわかりません。
順番に見ていきましょう。
他の犬のうんち|こわいのはウイルスと寄生虫
パルボウイルス
いちばん注意したいのが、犬パルボウイルスです。
これは感染した犬のうんちに大量に含まれ、
環境の中でもとてもしぶとく生き残ります(室内でも数か月)。
しかも、見た目が元気な犬でも、症状が出る数日前からウイルスを出していることがあります。
「元気そうな子のうんちだから大丈夫」とは言えない、ということです。
とくに、子犬やワクチンがまだ終わっていない犬は要注意です。
寄生虫
回虫や鉤虫などの寄生虫の卵も、他の犬のうんちからうつることがあります。
(ちなみに、これらの卵は「うんちが出てから数日以上たって」感染力を持つものが多く、
犬が新しいうんちを好むのは、この意味では偶然リスクを下げている面もあります。
ただし「新しければ100%安全」ではないので、油断は禁物です)
猫のうんち|トキソプラズマと、猫砂の“かたまり”に注意
猫と同居していると、犬が猫トイレをあさってしまう
——これは本当によくある悩みです。
リスクは2つあります。
トキソプラズマ
猫のうんちには、トキソプラズマという寄生虫が含まれることがあります。
すべての猫のうんちが危険というわけではありませんが、
妊娠中の方がいるご家庭では、とくに気をつけたい寄生虫です。
猫砂による腸閉塞(こちらのほうが緊急なことも)
見落とされがちですが、固まるタイプの猫砂は危険です。
うんちと一緒に猫砂を食べてしまうと、猫砂は水分を吸ってお腹の中で大きくふくらみ、
腸をふさいでしまうこと(腸閉塞)があります。体の小さい犬ほど危険です。
イタグレのような小柄な犬と猫が同居しているなら、ここは本当に気をつけてください。
対策は、物理的に届かなくすること。
- 猫トイレを、犬が届かない高い場所に置く
- 犬が入れない部屋に置き、猫だけが通れる扉をつける
- 上から入るタイプ・カバー付きの猫トイレにする
馬・牛のうんちにも注意(お散歩コースによっては)
牧場の近くや、馬のいる場所を散歩することがあるなら、もうひとつ。
馬糞・牛糞は食べさせないでください。
馬や牛には、寄生虫を駆除する「イベルメクチン」という薬が使われることがあり、
その成分がうんちに残ります。これを犬が食べると、中毒を起こすことがあります。
とくに一部の犬種(牧羊犬の仲間など)は、少量でも中毒になりやすいことが知られています。
イタグレや日本スピッツがそこに含まれるという情報は、今のところありません。
ただし近い犬種もいるため、断定はできません。わからない以上、食べさせないのが安全です。
やめさせる方法|「食べる前に止める」が基本
他の動物のうんちは、自分のうんちのように「先に片づけておく」ことができません。
だから、その場で食べさせないことが中心になります。
散歩中(他の犬のうんち)
- リードは短めに持ち、犬の少し前を歩く——うんちを見つける前に、飼い主が気づけるように
- 「そのまま行こう」と、においを嗅ぎ始める前に通り過ぎる
- 「ちょうだい」「おいで」で気をそらす練習をしておく(おやつと交換)
- 拾い食いがひどい子は、散歩用の口輪(バスケットマズル)も選択肢
家の中(猫のうんち)
- 前述のとおり、猫トイレを物理的に届かなくするのがいちばん確実です
叱って止めようとすると、かえって「急いで食べよう」としてしまうので、
叱るより、食べる前に気をそらす・近づけないのがコツです。
食べてしまったら、どうする?
もし食べてしまっても、あわてないでください。ただし、次のような場合は動物病院に連絡・受診を。
- 元気がない・食欲がない・嘔吐・下痢が出た
- 猫砂を大量に食べたかもしれない(お腹の張り・吐く・うんちが出ない → 腸閉塞のサイン)
- 相手の犬が病気だった可能性がある(パルボなど)
- 馬糞・牛糞を食べたかもしれない
とくに子犬・未ワクチンの犬で元気がなくなった場合は、早めに相談してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 自分のうんちより、他の犬のうんちのほうが危険ですか?
はい。相手の健康状態がわからないぶん、パルボウイルスや寄生虫のリスクが高くなります。散歩中は、他の犬のうんちに近づけないようにしましょう。
Q. 犬が猫のうんちを食べたら、どうなりますか?
トキソプラズマなどの寄生虫のリスクに加え、固まる猫砂を一緒に食べると腸閉塞の危険があります。とくに小型犬は注意。猫トイレは届かない場所に置いてください。
Q. においを嗅ぐのもダメですか?
嗅ぐだけなら問題ありません。ただ、嗅いでいるうちに食べてしまう子は、においを嗅ぎ始める前に通り過ぎるようにすると安全です。
Q. どうしても拾い食いが直りません。
散歩用の口輪(バスケットマズル)を使うと、物理的に食べられなくなります。見た目に抵抗があるかもしれませんが、安全のための有効な道具です。慣らし方は獣医師やトレーナーに相談を。
まとめ
- 他の動物のうんちは、自分のうんちより注意が必要
- 他の犬のうんち=パルボウイルス・寄生虫のリスク(子犬・未ワクチンはとくに)
- 猫のうんち=トキソプラズマ+固まる猫砂による腸閉塞(小型犬は危険)
- 馬・牛のうんち=薬(イベルメクチン)中毒のリスク
- やめさせ方は、食べる前に気をそらす・近づけない(叱るより効く)
- 猫トイレは物理的に届かなくする
ラーテルの子たちも散歩に出ますが、拾い食いは「叱る」より「食べる前に気をそらす」で対応しています。
散歩や同居の環境は、ご家庭ごとに違います。
「うちの子はここが危ないな」というポイントを見つけて、食べる前にひと工夫してあげてください。
食糞そのものの基本(なぜ食べるのか・自分のうんちの場合)は、犬がうんちを食べるのはなぜ?やめさせ方にまとめています。
参考文献
- Hart BL, Hart LA, Thigpen AP, Tran A, Bain MJ. (2018) The paradox of canine conspecific coprophagy. *Veterinary Medicine and Science* 4(2): 106-114. DOI: 10.1002/vms3.92(PMID: 29851313)
- Ghasemzadeh I, Namazi SH. (2015) Review of bacterial and viral zoonotic infections transmitted by dogs. *Journal of Medicine and Life* 8(Spec Iss 4): 1-5.(PMID: 28316698)